白湯のちから
栄養 2023/05/03 1113 views
健康にいいとされる白湯は、身体を温めるだけでなく、便秘の改善やリラックス効果など嬉しいことがたくさんあります。飲む時間帯や飲み方など、正しく効果を得るために意識したいポイントについて日本アーユルヴェーダヘルスカウンセラーの知念伽央梨さんに教えてもらいました。
白湯の効果
「アーユルヴェーダ」は、心身に不調が起こったときに、その人の体質に合った方法で対処をするというインドの伝統医学。体にいいと謳われる白湯もアーユルヴェーダの考えに基づいた健康法なんです。
「14世紀に記されたアーユルヴェーダの古典書『バーヴァプラカーシャ』には白湯を飲むと『カパとヴァータ、アーマと脂肪組織を減少させ、食欲を強め、膀胱を浄化し咳と呼吸困難と新しい熱病を癒す』と書かれています。これはどういうことかと言うと、白湯を飲むことで、『倦怠感やだるさ、寝付きの悪さや目覚めの悪さの緩和』、『身体中の循環が良くなる』、『少食でも過食でもなく正常の食欲になる』、『尿の出が良くなり身体が浄化される』、『咳と呼吸困難の緩和』、『初期の発熱時に良い』ということが得られるということなんですね(参照:白湯の処方箋/日本アーユルヴェーダ研究所)」
人間にとって必要な「水」を温めて飲むことで、「消化力が上がる」と考えられています。白湯を飲むとスロータス(血管、リンパ管、胃や腸などの消化管といった身体の中にある管)の閉塞を防ぎ、消化管の中のものがスムーズに流れます。消化、吸収、代謝が滞りなく行われ、身体に不必要なものは体外へ排出されます。逆に冷たいものを摂り過ぎてしまうと、スロータスが閉じ、消化力を指す「消化の火」が燃えず食べ物がうまく消化できなくなってしまいます。また、体液がうまく循環されなくなるので毒素が溜まってしまうのです。すると老化や病気の原因になります。
「白湯を飲む最大のメリットは何と言っても『正常な食欲と消化力を得られる』こと。現代人は過度に物を食べたり、逆に必要なのに食べなかったりと「食」に関する意識が大変乱れていて、病名こそつかないけれどなんとなく調子が悪いという方もいらっしゃいます。 体が不調だと心の調子も悪くなるので、心身の健康を目指すためにも白湯は飲んでほしいですね」
教えて!効果的な白湯の飲み方
白湯とは「蓋をせずにお湯を10〜15分ほど沸かし、少し冷ましたもの」。温度は、消化器官の機能を促進させてくれる65度以上を目安にしましょう。これは、「フーフー冷ますと飲める」くらいの温度です。古代では水中の菌を殺す目的から沸騰させていたとも言われていますが、現代では電気代が気になる方は沸かす時間を減らしてもOK。一度沸かしたら、保温性のポットに入れて保管するといつでも飲めますよ。
飲むタイミングについては、「いつでも飲んでほしい」と知念さん。ただ、アーユルヴェーダでは朝一番は常温の水を飲むことを勧めている。「寝ている6〜8時間は身体が休んでいる時間ですよね。起きがけに飲む飲み物は、身体に水分を与えて少しずつ胃腸の機能を呼び覚ますという目的から、熱い白湯ではなく常温の水を選ぶといいです。白湯は2杯目以降から飲んでください。就寝前に飲む白湯は、だるさの軽減に繋がるのと、寝付きや目覚めの良さも期待できるのでおすすめですよ」。飲む量に関しても、一気にがぶがぶ飲んでしまうと身体が驚いてしまうので、ゆっくり何回かに分けて飲むのが良いとのこと。少しずつ口に含んで飲んだほうが喉の乾きも抑えやすくなるそうです。
また、体質や症状、季節によっては「湯冷まし」に変えるといいのだそう。湯冷ましとは、沸騰させたお湯を人肌くらいの温度になるように自然に冷ましたもの。フーフーしないと飲めない白湯に対して、湯冷ましはすいすい飲める温度の水です。暑がりの人や、真夏で気温が高いとき、胃腸炎や口内炎など身体のどこかが熱を帯びて炎症を起こしているときはもちろんですが、仕事に追われたり、悩み事で頭の中が熱くなったりしたときにもクールダウンとして飲んでみてください。この時、氷入りのキンキンに冷えた飲み物はNG。湯冷ましで満足できない方は麦茶やさんぴん茶、ココナッツウォーター、ミントのハーブティーなど、身体の余分な熱を取ってくれる飲み物を選んで、常温かやや冷たいくらいの温度で飲んでみてください。
湯冷ましがいいとされる夏でも、クーラーに当たりすぎて寒くなってしまった場合は白湯に切り替えるといいとのこと。体調と相談しながら、上手に飲むものを選びましょう。
知念伽央梨さん
米国補完医療大学AUCM、グジャラートアーユルヴェーダ提携 Ayur Vedic Medicine Practitioner。日本アーユルヴェーダヘルスカウンセラー。株式会社i-PLANA(アイプラーナ)代表として、沖縄県内でスパを経営。約5000年の歴史があるインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」の魅力を伝えるべく、県内で理論やトリートメントなどを教えるスクールを展開している。
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