空腹時間と体重コントロール

ライフスタイル 2022/04/01 1384 views

飽食の時代と言われて久しいですが、食べ過ぎと言われる今の時代、ダイエットは多くの人の関心を集めるテーマの一つです。さまざまなダイエット方法がありますが、最近よく聞くのが、14時間や16時間などある一定の時間、空腹でいることで体重を減らせるというもの。空腹時間と体重をコントロールすることの関係について、またファスティングと呼ばれる断食についてなど、(株)カロリア ミールトレーニング®️代表で管理栄養士として活躍されている宇栄原千春さんにお話をうかがいました。

空腹時間により働きが活発化する「オートファジー」

宇栄原さんは、ファスティングと日々の食事管理を組み合わせた独自のダイエットプログラムで、これまで数々のダイエット成功者を生み出した経験の持ち主。その考えの根底にあるのは、栄養バランスと摂取カロリーです。

今回、「ある一定の空腹時間を設けるだけでダイエット効果があるか」という点についてうかがうと「難しいですが、イエスでもありノーでもあるという感じでしょうか。というのも、1日24時間のうち、いくら16時間食べないからといって、残りの8時間の間に栄養バランスも考えずに暴飲暴食をしたら、それは痩せることにはつながらないのではないかな、と思います。ただ、ある一定の空腹時間を設けることで、「自らを食べる」という意味の『オートファジー』の仕組みが発動することはノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典栄誉教授が発表して話題になりましたね。今広まっている空腹時間ダイエットはこの研究がもとになっていると思います」と宇栄原さん。

東京工業大学の大隅良典栄誉教授が「オートファジー」のメカニズムの発見でノーベル生理学・医学賞を受賞したのは2016年。半世紀以上前から研究されていたオートファジーの全容を肉眼で初めて観察し、電子顕微鏡でその過程を解明。オートファジーの14の主要な遺伝子(ATG遺伝子)を発見しました。

オートファジーは、細胞が自らの細胞質成分を食べて分解することでアミノ酸を得る機能で、細胞内の「リサイクルシステム」とも呼ばれるもの。簡単に言うと、人間が何も食べないで何日か過ごしてもすぐに死ぬことがないのは、生命を維持するために「細胞が自ら(Auto)を食べる(Phagy)」仕組みが活発に行われているからとのこと。

この仕組みにより、空腹の時間が続くと体内にあるものでアミノ酸を作り出そうとし、それにより細胞が生まれ変わり、がんや糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防や、肌や筋肉などの老化防止の効果があると考えられています。

大切なのは栄養バランスと摂取カロリー

宇栄原さんもダイエットプログラムにおいて、オートファジーをふまえたファスティング(断食)を定期的に取り入れています。

「例えばどうしても食べることが続くタイミングがありますよね。例えば年末年始。私もやりますが、年末年始が明けて忙しさが落ち着く2月頃に1週間ほどのファスティングをします。本当は暴飲暴食をした後の早目のタイミングで、七草の頃にできればいいのですが、忙しい現代ではなかなかそうもいかないので。また、本当は食べすぎないように日々調整できればいいのですが、簡単ではないんですよね。その調整のためにファスティングをするのは効果的だと思います」。

ただ、体重コントロールで大切なのは、あくまでも栄養バランスと摂取カロリーだと宇栄原さんはいいます。
「日々の生活の中で、空腹時間を取ることはもちろん大切だと思います。空腹というのは『エネルギーが必要ですよ』というサインなので、空腹になってから食べることは一番大切。私自身もその考え方です。ただ、ダイエットはインとアウトの関係だと思うので、どれだけ食べてどれだけ使ったか、それによって差し引きどうなったのかということだと思うんですね。この基本的な理論を外して考えるわけにはいきません」。

食べた分のエネルギーを消費しきれなかったら、体重はやはり増加してしまいます。また、宇栄原さんは食べる量と消費する量のバランスだけでなく、食べる時間帯も重要だと話します。

「私がダイエットプログラムでみなさんに伝えているのは、食べる時間帯は昼間にしましょうということ。それは、人間は時間帯によって出るホルモンが決まっているからなんです。人によっては仕事で夜勤の方もいると思いますが、それでも夜の8時や9時以降は食べないようにというアドバイスをしています。何万年もの間、人間は朝起きて夜寝るという生活をしてきていますよね。夜中まで起きているようになったのは、せいぜいこの100年くらいじゃないでしょうか。そう考えるとすぐにホルモンの出る時間がそんなに簡単に変わるとは思えなくて、変わるとしても何世代か先ではないかなと。そうであれば、もともとの人間のリズムに合わせて食べる方が、健康的だし痩せやすくなると思います」。

また、栄養バランスについては「できるだけ素材そのものを食べるようにすること」がポイントだといいます。素材が加工されればされるほど、本来の栄養素すべてを摂取することは難しくなってしまうそう。例えばお米は白米よりも玄米の方がビタミンもミネラルもたくさん入っているし、小麦粉であれば全粒粉の方が栄養素としては多く含まれている。野菜ジュースなども、野菜そのものに比べたら栄養素はなくなっているのが現実です。特に小麦粉はスパゲッティやうどん、パンなど、さらに加工されることが多いので注意が必要とのこと。

体重のコントロールには、ある一定時間を食べないようにするというのではなく、摂取カロリーや栄養など、全体的なバランスを見るのがやはり重要。ファスティングなど専門知識が必要なものへ挑戦するときは、自己判断でやるのではなく専門機関に相談するのが安心です。

宇栄原千春 https://caloria.biz/

参考:東京工業大学「オートファジー-ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授の研究とは」
https://www.titech.ac.jp/news/2016/036467

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