自己肯定感インタビュー vol.04 猪瀬 康介 さん
ライフスタイル 2021/11/30 2121 views
kenko ISLAND60号、特集「自己肯定感の育て方」に関連した全4回のインタビューシリーズの最終回は、FC琉球のゴールキーパー、猪瀬康介 さんです。物怖じしない強い眼差し、質問に対して簡潔に答える姿勢、20歳とは思えない落ち着いた物腰の猪瀬さんに自己肯定感についてお話をうかがいました。
profile・猪瀬康介(いのせ こうすけ)
茨城県出身。2000年12月25日生まれ。高校サッカーの強豪校である流通経済大学附属柏高校に進学。卒業後、2019年よりFC琉球にゴールキーパーとして所属。休日は趣味のカフェ巡りを楽しむ。
Twitter >>> @ryukyu031
Instagram>>> @kosuke.ryukyu_official
高校時代に直面した厳しい現実
−高校生という多感な時期に自分の力不足に直面したという記事を拝見しました。当時のことについてお話しいただけますか?
子どもの頃からサッカーをやってきて、プロのサッカー選手になることしか考えずにきたんですね。だからそういう基準で高校も選んだし、高校サッカーで結果を出して、プロに行くって思っていました。でも、当然試合に出られるだろうと思っていた高校3年の時に、入学したばかりの後輩がレギュラーになるというのが決まって、監督から自分に試合に出ていいという声かけが全然なくて、最初はやっぱりかなり落ち込みました。後輩ばっかり認められて、自分の力不足を責める気持ちと、悔しさと。自分の方がいいだろうって思う気持ちもある一方で、でも後輩の方がシュートを止めているなって認めざるを得ない気持ちと。半々だったと思います。それと、少しふてくされていたところもあったと思います。
−ショックだったと思いますが、その状況をどうやって受け入れたのでしょうか?
正直なところ、一時はサッカーから離れたいと思いました。実際に高校を卒業したらサッカーをやめて仕事に就こうと、履歴書を書いて送ることもしました。これまでずっと、高校を卒業した時点でプロにいけなかったらサッカーをやめるつもりでいましたから。でも、やっぱりサッカーでごはんを食べていきたいって思う気持ちが本当に強かったんですね。だから監督に、もう一度サッカーに打ち込みますって伝えました。
もともと切り替えは早いんです。悩み始めはピッチにいてもどこでも考えていますが、ある一定のところまでとことん考えたら「もうそんなに考えても仕方がない」って切り替わります。自分が選ばれなかったあの時も、落ち込みはしたけど「後輩がメインのこの状況で、急に自分がサブから先発に変わることはまずないだろう」って、ある時から冷静に考えることができるようになりました。それからは、サッカーができることに感謝しようって気持ちに切り替えられましたね。
−気持ちが切り替わった後のサッカーに対する姿勢には変化はありましたか?
すごく変わりました。練習に対する熱量や、本気でプロになってやるんだっていう気持ちがものすごく強くなって、試合に出ているか出ていないかっていうのは関係ないと思えるようになりましたし。その切り替えのおかげで、最終的に試合に出ることは叶わなかったけれど、実際に夢だったプロのサッカー選手になることは叶ったわけですから。 こうやって切り替えが早かったり、割り切ることができるようになったのは、今考えると両親がいつでも「やりたいことはやりなさい。やりたくないことは無理に続ける必要はない」という姿勢で育ててくれたからなのかもと思います。もともと家族がすごく仲が良くて、今でも悩みがあったら兄と姉に相談することも多いし、基本的にポジティブな考え方ができるのも両親の育て方のおかげかなと思います。
人の言葉に惑わされず、今を大切にする姿勢で
−プロサッカー選手として活躍するようになって、気分のコントロールなどで工夫されていることはありますか?
試合に臨む前にルーティンとして必ずやることが、お風呂に入ることです。何も考えずに身体をリラックスさせて温めて。そこでスイッチを入れる感じです。お風呂に浸かっている間にどんどん気分を高めていって、その後にストレッチをします。汗をかくと筋肉もほぐれて柔軟性も高まるので、精神的なことだけでなく身体にもいいことがあるんですね。
オフの時はカフェに行きます。カフェ巡りが好きなので、いろんなカフェに行ったり、車やファッションも好きなので、そういうものをネットで見たりします。もともと気分の切り替えは早いので、悩みを引きずったりすることはないんですが、自分が好きなことを楽しむ時間が持てるのはいいですね。
−試合などで人前に立つことが多いですが、周りからの意見に影響を受けたり、別の選手と比較するようなこともありますか?
試合をしていると観客からいろんな声が飛んできます。ゴールキーパーなのでサポーターからの声援も、それ以外の声も一番伝わる場所にいるんですね。嬉しい言葉ももちろんあるけど、嫌な声もある。嫌な声に対して思わず反応してしまいそうになったこともありますが、すぐに試合に集中するように自分自身を戻しました。
基本的には人の目はそこまで気にしません。ファッションに関しては人前に出る時は髪型を100%ビシッとしたいと思ってやっていますが、それは人目を気にするというよりは、自分自身のルールという感じで、これをやると気持ちが入るからなんですね。
僕自身もSNSをやっているので、サッカー関係の選手のものは見ますね。例えば、トップ選手のSNSを見たら、フォロワー数の多さや乗っている車とかを見て「うゎ!すごい!」って思うけど、羨ましいとかカッコいいなと思う気持ちと同じくらい、自分もこうなってやろうって思うので、自分がダメだと考えるような比較の仕方はしないですね。あとは同年代の選手が頑張っている様子などを見たら、自分はまだまだだからもっと頑張ろうって、自分を鼓舞するための対象として見ることが多いと思います。
過去を引きずったり、未来を心配しすぎるんじゃなくて、その時々で自分が今、何をすることが大切なのかを考えて、これからもレベルアップしていきたいです。
▷自己肯定感インタビュー第1回のHY 仲宗根 泉さんのインタビューはこちら
▷自己肯定感インタビュー第2回のくだか まりさんのインタビューはこちら
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