自己肯定感インタビュー vol.04 猪瀬 康介 さん

kenko ISLAND60号、特集「自己肯定感の育て方」に関連した全4回のインタビューシリーズの最終回は、FC琉球のゴールキーパー、猪瀬康介 さんです。物怖じしない強い眼差し、質問に対して簡潔に答える姿勢、20歳とは思えない落ち着いた物腰の猪瀬さんに自己肯定感についてお話をうかがいました。

profile・猪瀬康介(いのせ こうすけ)
茨城県出身。2000年12月25日生まれ。高校サッカーの強豪校である流通経済大学附属柏高校に進学。卒業後、2019年よりFC琉球にゴールキーパーとして所属。休日は趣味のカフェ巡りを楽しむ。

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Instagram>>> @kosuke.ryukyu_official 

高校時代に直面した厳しい現実

−高校生という多感な時期に自分の力不足に直面したという記事を拝見しました。当時のことについてお話しいただけますか?

子どもの頃からサッカーをやってきて、プロのサッカー選手になることしか考えずにきたんですね。だからそういう基準で高校も選んだし、高校サッカーで結果を出して、プロに行くって思っていました。でも、当然試合に出られるだろうと思っていた高校3年の時に、入学したばかりの後輩がレギュラーになるというのが決まって、監督から自分に試合に出ていいという声かけが全然なくて、最初はやっぱりかなり落ち込みました。後輩ばっかり認められて、自分の力不足を責める気持ちと、悔しさと。自分の方がいいだろうって思う気持ちもある一方で、でも後輩の方がシュートを止めているなって認めざるを得ない気持ちと。半々だったと思います。それと、少しふてくされていたところもあったと思います。

−ショックだったと思いますが、その状況をどうやって受け入れたのでしょうか?

正直なところ、一時はサッカーから離れたいと思いました。実際に高校を卒業したらサッカーをやめて仕事に就こうと、履歴書を書いて送ることもしました。これまでずっと、高校を卒業した時点でプロにいけなかったらサッカーをやめるつもりでいましたから。でも、やっぱりサッカーでごはんを食べていきたいって思う気持ちが本当に強かったんですね。だから監督に、もう一度サッカーに打ち込みますって伝えました。

もともと切り替えは早いんです。悩み始めはピッチにいてもどこでも考えていますが、ある一定のところまでとことん考えたら「もうそんなに考えても仕方がない」って切り替わります。自分が選ばれなかったあの時も、落ち込みはしたけど「後輩がメインのこの状況で、急に自分がサブから先発に変わることはまずないだろう」って、ある時から冷静に考えることができるようになりました。それからは、サッカーができることに感謝しようって気持ちに切り替えられましたね。

−気持ちが切り替わった後のサッカーに対する姿勢には変化はありましたか?

すごく変わりました。練習に対する熱量や、本気でプロになってやるんだっていう気持ちがものすごく強くなって、試合に出ているか出ていないかっていうのは関係ないと思えるようになりましたし。その切り替えのおかげで、最終的に試合に出ることは叶わなかったけれど、実際に夢だったプロのサッカー選手になることは叶ったわけですから。 こうやって切り替えが早かったり、割り切ることができるようになったのは、今考えると両親がいつでも「やりたいことはやりなさい。やりたくないことは無理に続ける必要はない」という姿勢で育ててくれたからなのかもと思います。もともと家族がすごく仲が良くて、今でも悩みがあったら兄と姉に相談することも多いし、基本的にポジティブな考え方ができるのも両親の育て方のおかげかなと思います。

人の言葉に惑わされず、今を大切にする姿勢で

−プロサッカー選手として活躍するようになって、気分のコントロールなどで工夫されていることはありますか?

試合に臨む前にルーティンとして必ずやることが、お風呂に入ることです。何も考えずに身体をリラックスさせて温めて。そこでスイッチを入れる感じです。お風呂に浸かっている間にどんどん気分を高めていって、その後にストレッチをします。汗をかくと筋肉もほぐれて柔軟性も高まるので、精神的なことだけでなく身体にもいいことがあるんですね。

オフの時はカフェに行きます。カフェ巡りが好きなので、いろんなカフェに行ったり、車やファッションも好きなので、そういうものをネットで見たりします。もともと気分の切り替えは早いので、悩みを引きずったりすることはないんですが、自分が好きなことを楽しむ時間が持てるのはいいですね。

−試合などで人前に立つことが多いですが、周りからの意見に影響を受けたり、別の選手と比較するようなこともありますか?

試合をしていると観客からいろんな声が飛んできます。ゴールキーパーなのでサポーターからの声援も、それ以外の声も一番伝わる場所にいるんですね。嬉しい言葉ももちろんあるけど、嫌な声もある。嫌な声に対して思わず反応してしまいそうになったこともありますが、すぐに試合に集中するように自分自身を戻しました。

基本的には人の目はそこまで気にしません。ファッションに関しては人前に出る時は髪型を100%ビシッとしたいと思ってやっていますが、それは人目を気にするというよりは、自分自身のルールという感じで、これをやると気持ちが入るからなんですね。

僕自身もSNSをやっているので、サッカー関係の選手のものは見ますね。例えば、トップ選手のSNSを見たら、フォロワー数の多さや乗っている車とかを見て「うゎ!すごい!」って思うけど、羨ましいとかカッコいいなと思う気持ちと同じくらい、自分もこうなってやろうって思うので、自分がダメだと考えるような比較の仕方はしないですね。あとは同年代の選手が頑張っている様子などを見たら、自分はまだまだだからもっと頑張ろうって、自分を鼓舞するための対象として見ることが多いと思います。

過去を引きずったり、未来を心配しすぎるんじゃなくて、その時々で自分が今、何をすることが大切なのかを考えて、これからもレベルアップしていきたいです。

▷自己肯定感インタビュー第1回のHY 仲宗根 泉さんのインタビューはこちら
▷自己肯定感インタビュー第2回のくだか まりさんのインタビューはこちら
▷自己肯定感インタビュー第3回の平安座 レナさんのインタビューはこちら

自己肯定感インタビュー vol.03 平安座 レナさん

kenko ISLAND60号、特集「自己肯定感の育て方」に関連した全4回のインタビューシリーズ。第3回は、アパレルブランド「HENZA」のデザイナー、平安座 レナさん。抜群の存在感を放つレナさんの自己肯定感とは?お話をうかがいました。

profile・平安座 レナ(へんざ れな)
26歳で自身でデザイナーを務めるアパレルブランド「HENZA」を立ち上げる。デザイナーとしてだけでなく、クリエイティブディレクター、モデルやインフルエンサーとしても活躍。

Instagram>>> @lena_henza
online store >>> https://henza.online/

学ぶことで得られる自由を知り、人見知りから社交的に

−いきなりですが、自分自身のことは好きですか?

好きです。友達みたいな感じ。俯瞰で見る自分と、主観で見る自分がいて、いつも自分のほかにもう一人の自分がいて、それぞれが友達みたいな感覚ですね。高校生くらいの時だったと思うんですが、自分が生きている意味とかを考えて、自分と向き合うことが多かったんですね。その時に自分の先祖のことも考えて。「私」がいまここにいるのは、両親、祖父母、先祖と、いろんな人の血が混ざり合ってのことだと思うんです。そうやって生まれてきたことを自覚したので、自分のことを嫌いと思うことはないですね。自分自身ではあるけれど、一人じゃないっていう気持ちがあるというか。先祖のDNAを引き継いでいるわけだから、そういう意味も含めて自分のことは好きですね。

−先祖のことまで考えたというのはすごいですね。

うちに家系図があって、それを見たら琉球王国の王族の末裔という話が出てきて。子どもの頃からそういった話を聞いていたので、自分のルーツをたどったときに、沖縄という場所が琉球だった時代に、国を司ることに携わっていたという部分があることが、もしかしたら今の自分につながっているのかもしれません。この話は父や兄に熱心に聞かされましたね。

−どんな子どもだったんですか?

小学校まではめっちゃ人見知りでしたね。人と目を合わせたくなかったし、そっぽばっかり向いていました。お父さんとお母さんにくっついていればいいと思っていたから、友達も別に作らなくていいやって。でも実際に小学校に入って、数字やひらがな、漢字を勉強するようになったらすごく楽しくて勉強が大好きになって。自分の成長が感じられる感覚があったんだと思う。それから友達を作ることも楽しくなって、どんどん人が変わったように社交的になったかもしれない。「生きているって楽しい!」みたいな。自由を感じられたのかもしれないですね。

親に勉強しなさいと言われたことも一回もなくて。でも、一度、小学校3年生のときだったかな。夏休みの宿題をまったくしないで9月になったんですよ。それで、真っ白のままの宿題を持って学校に行ったら当たり前だけど先生に怒られて。家に持って帰って親に言ったら「あなたがやらなかったから怒られたんだよ」って。両親ともいつでも「あんたのやりたいことを自分でやりなさい。幸せに生きていければいいよ」という姿勢で、私がやることに口出しすることはないけれど、だからこそ自分の行動に責任を持つっていうことを自然と覚えたかもしれません。

やりたいことはすぐに行動。「今」を逃さない

−自己分析をした場合、自分の良いところ、悪いところについてはどうですか?

良いところは、すぐに行動するところ。自覚してなかったんですが、よくみんなに「なんでこんなに行動できるの?」ってよく聞かれるようになって、逆に「みんなしないの?」って思ったんですよ。それで「あぁ、これは自分のいいところなんだな」って気づいた感じです。正直なところ、やりたいのにできないという感覚が分からなくて、やりたいと思ったらもう行動を起こしちゃっているんですね。チャンスがあればすぐ掴まないと、今逃してしまったら次はないと思うことが多いからかもしれません。

悪いところもいっぱいありますよ。自分に負けちゃうところとか。直感的に行動しても、もっと努力が必要だったのに甘えが出て80%くらいしか頑張れなくて目標に対してやりきれなかったとかはあります。意思が中途半端になってしまった場合は、もう一度目標設定をして、例えば1ヶ月後に自分はこうなりたいというのを書いて、常に見えるところに置きますね。

−26歳で自分のブランドを立ち上げられましたが、ずっと夢として持ち続けていたのでしょうか?

母がミシンを教える免許を持っていたので、5歳くらいから教えてもらってポーチを作ったりしていましたね。中学生くらいから洋服やファッションに興味が出てきて、スカーフでトップスやスカートを作ったりし始めるうちに、ちゃんと作る仕組みを勉強したいと思うようになって、東京の文化服装学院に通いました。

もともとはニューヨークにある有名な服飾デザイナーを排出する学校に通いたいと思って、英語の勉強もしていたんですが、アメリカに行くことを両親がとても心配して、私自身も学びたいのは言語ではなく洋服だなと思ったので東京の学校に決めました。常に自分は何をやりたい、どうありたいっていうのを考えているので、学校卒業後に自分のブランドを立ち上げるのも自然の流れだったと思います。

−壁にぶつかることはありませんでしたか?

あったかもしれないけど、覚えていない(笑)。もちろんあるんですけど、すぐに次の行動をしちゃうので勢いで忘れてしまうのかも。でも、何かモヤモヤしたことがあったら紙に書き出して、なんでモヤモヤしているかを考えるんですね。どうでもいいけどって思うようなことも、とりあえず書きます。そうしないと色んなモヤモヤが蓄積されていくから。その中で、自分じゃ解決できないっていうものはペケをつけてそれでおしまい。この作業だけでスッキリするんですよ。モヤモヤしているのが、自分で解決できることなのかどうかを分別できるので、この作業で自分と対話しているのかもしれないです。

−自分はダメだなって思うことはありますか?

ダメとは思わないけど、怠けている時っていうのはありますね。そういう時は自分で自分のお尻を叩く(笑)。自分が決めて自分でやるとうのは、言ってみれば自分との約束。これは「自分のことを好きか」ということに絶対につながる部分だと思います。だからもしも一生サボり続けてしまったら、絶対に自分のことを嫌いになってしまうと思う。だってそれは自分に対して背いたことしているわけだから。周りの人に対して約束を守るのと同じように、自分に対しても約束を守ることは、自分への信頼や信用を築くことだと思うんですよね。

人生って一回きりで後戻りできないから、いつも「今だ!走れー!!」って感じ。何かをする時に、みんな「こんな風になってしまったらどうしよう」って言ったりするけど、「やってみないとそんな問題も出てこないよ!」って思います。「今やってもいないのにその問題を解決しようと思ってもできないさ!」って。「やることやるしかないっしょ!」って思いますね。

▷自己肯定感インタビュー第1回のHY 仲宗根 泉さんのインタビューはこちら
▷自己肯定感インタビュー第2回のくだか まりさんのインタビューはこちら
▷自己肯定感インタビュー第4回の猪瀬 康介 さんのインタビューはこちら

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