空腹時間と体重コントロール

飽食の時代と言われて久しいですが、食べ過ぎと言われる今の時代、ダイエットは多くの人の関心を集めるテーマの一つです。さまざまなダイエット方法がありますが、最近よく聞くのが、14時間や16時間などある一定の時間、空腹でいることで体重を減らせるというもの。空腹時間と体重をコントロールすることの関係について、またファスティングと呼ばれる断食についてなど、(株)カロリア ミールトレーニング®️代表で管理栄養士として活躍されている宇栄原千春さんにお話をうかがいました。

空腹時間により働きが活発化する「オートファジー」

宇栄原さんは、ファスティングと日々の食事管理を組み合わせた独自のダイエットプログラムで、これまで数々のダイエット成功者を生み出した経験の持ち主。その考えの根底にあるのは、栄養バランスと摂取カロリーです。

今回、「ある一定の空腹時間を設けるだけでダイエット効果があるか」という点についてうかがうと「難しいですが、イエスでもありノーでもあるという感じでしょうか。というのも、1日24時間のうち、いくら16時間食べないからといって、残りの8時間の間に栄養バランスも考えずに暴飲暴食をしたら、それは痩せることにはつながらないのではないかな、と思います。ただ、ある一定の空腹時間を設けることで、「自らを食べる」という意味の『オートファジー』の仕組みが発動することはノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典栄誉教授が発表して話題になりましたね。今広まっている空腹時間ダイエットはこの研究がもとになっていると思います」と宇栄原さん。

東京工業大学の大隅良典栄誉教授が「オートファジー」のメカニズムの発見でノーベル生理学・医学賞を受賞したのは2016年。半世紀以上前から研究されていたオートファジーの全容を肉眼で初めて観察し、電子顕微鏡でその過程を解明。オートファジーの14の主要な遺伝子(ATG遺伝子)を発見しました。

オートファジーは、細胞が自らの細胞質成分を食べて分解することでアミノ酸を得る機能で、細胞内の「リサイクルシステム」とも呼ばれるもの。簡単に言うと、人間が何も食べないで何日か過ごしてもすぐに死ぬことがないのは、生命を維持するために「細胞が自ら(Auto)を食べる(Phagy)」仕組みが活発に行われているからとのこと。

この仕組みにより、空腹の時間が続くと体内にあるものでアミノ酸を作り出そうとし、それにより細胞が生まれ変わり、がんや糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防や、肌や筋肉などの老化防止の効果があると考えられています。

大切なのは栄養バランスと摂取カロリー

宇栄原さんもダイエットプログラムにおいて、オートファジーをふまえたファスティング(断食)を定期的に取り入れています。

「例えばどうしても食べることが続くタイミングがありますよね。例えば年末年始。私もやりますが、年末年始が明けて忙しさが落ち着く2月頃に1週間ほどのファスティングをします。本当は暴飲暴食をした後の早目のタイミングで、七草の頃にできればいいのですが、忙しい現代ではなかなかそうもいかないので。また、本当は食べすぎないように日々調整できればいいのですが、簡単ではないんですよね。その調整のためにファスティングをするのは効果的だと思います」。

ただ、体重コントロールで大切なのは、あくまでも栄養バランスと摂取カロリーだと宇栄原さんはいいます。
「日々の生活の中で、空腹時間を取ることはもちろん大切だと思います。空腹というのは『エネルギーが必要ですよ』というサインなので、空腹になってから食べることは一番大切。私自身もその考え方です。ただ、ダイエットはインとアウトの関係だと思うので、どれだけ食べてどれだけ使ったか、それによって差し引きどうなったのかということだと思うんですね。この基本的な理論を外して考えるわけにはいきません」。

食べた分のエネルギーを消費しきれなかったら、体重はやはり増加してしまいます。また、宇栄原さんは食べる量と消費する量のバランスだけでなく、食べる時間帯も重要だと話します。

「私がダイエットプログラムでみなさんに伝えているのは、食べる時間帯は昼間にしましょうということ。それは、人間は時間帯によって出るホルモンが決まっているからなんです。人によっては仕事で夜勤の方もいると思いますが、それでも夜の8時や9時以降は食べないようにというアドバイスをしています。何万年もの間、人間は朝起きて夜寝るという生活をしてきていますよね。夜中まで起きているようになったのは、せいぜいこの100年くらいじゃないでしょうか。そう考えるとすぐにホルモンの出る時間がそんなに簡単に変わるとは思えなくて、変わるとしても何世代か先ではないかなと。そうであれば、もともとの人間のリズムに合わせて食べる方が、健康的だし痩せやすくなると思います」。

また、栄養バランスについては「できるだけ素材そのものを食べるようにすること」がポイントだといいます。素材が加工されればされるほど、本来の栄養素すべてを摂取することは難しくなってしまうそう。例えばお米は白米よりも玄米の方がビタミンもミネラルもたくさん入っているし、小麦粉であれば全粒粉の方が栄養素としては多く含まれている。野菜ジュースなども、野菜そのものに比べたら栄養素はなくなっているのが現実です。特に小麦粉はスパゲッティやうどん、パンなど、さらに加工されることが多いので注意が必要とのこと。

体重のコントロールには、ある一定時間を食べないようにするというのではなく、摂取カロリーや栄養など、全体的なバランスを見るのがやはり重要。ファスティングなど専門知識が必要なものへ挑戦するときは、自己判断でやるのではなく専門機関に相談するのが安心です。

宇栄原千春 https://caloria.biz/

参考:東京工業大学「オートファジー-ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授の研究とは」
https://www.titech.ac.jp/news/2016/036467

運動も大事!kenko ISLAND3分プログラムのススメ

毎日を健康に過ごすために食事と同じくらい大切なのが運動!最新号61号では、ビギナーにもおすすめのkenko ISLANDオリジナル3分プログラムを紹介しました。YouTubeで公開している動画を見ながら一緒に運動できるようになっています。

4つの動きで全身を動かす!

Step1/プルダウン
肩甲骨を大きく動かすことで、肩こりの解消や消化機能のアップ、自律神経を整えることが期待できます。
①手のひらを向かい合わせ、まっすぐに上に伸ばす
②手のひらを返しながら、肩甲骨を引き下げるように両腕をおろす

Step2/グッドモーニング
腰痛予防や消化機能を助けるポーズ。猫背で姿勢を正したい、という人にもおすすめです。
①両手を頭の後ろで組み、背中をまっすぐ伸ばす
②背中をまっすぐ維持したまま、股関節から前方に倒れ、太もも裏の筋肉を使うイメージで起き上がる

Step3/スタンディングニートゥーエルボー
全身の筋肉を動かすことができるポーズ。伸ばしている方の腕が下がらないように気をつけましょう。
①両手を頭上に挙げる
②身体を丸めながら、おへその前で膝と肘を合わせる
③左右交互に行う

Step4/スクワットプルダウン
Step1のプルダウンを取り入れたスクワットポーズ。キツイ場合はスクワットのみでもOK。
①両手を頭上に挙げる
②股関節、膝関節を曲げ、スクワットの姿勢を取ると同時に、両腕はプルダウンを行う
③起き上がる時は股関節から動かすことを意識し、同時に両腕も頭上に伸ばす

身体をととのえる要素がバランス良く入ったメニュー

今回プログラムを考えてくれたのは、うるま市健康福祉センターうるみんを拠点に活動しているトレーナーの高橋烈央さんと金城壮馬さん。

「日頃運動不足の人が弱りやすい筋肉を中心に鍛えることができるメニューにしました。例えば、プルダウンのように両腕を挙げる運動は日常では意外と行わないもの。ここの筋肉が衰えると、肩こりや腰痛、血流の動きが悪くなることにつながります。また、姿勢を正すことで、食べたものの消化を助け、食後に脂肪蓄積を予防する効果も期待できます」と教えてくれました。

動画では立って行っていますが、座ったままでも◎。デスクワークの合間に行うのもおすすめです。 「1セットだけ行うよりも、セット数を増やせば増やすほど、脂肪燃焼を助ける有酸素運動の効果も得られます。ぜひ繰り返し行ってみてください!」と高橋さん。運動初心者という方は、2〜3セットを目指してチャレンジしてみましょう。

うるま市健康福祉センターうるみん
住所/沖縄県うるま市安慶名1-8-1
営業時間/月曜〜土曜10:00〜21:00(日曜は19:00まで)
☎098-973-4007
https://www.urumin.jp/

公式マスコット「わお」って?