自分にぴったりの枕を見つけよう!

快眠のためのキーとなる枕。眠りの専門店「マイまくら」でピローアドバイザーの今藤さんに、寝るときの正しい姿勢や枕の選び方について聞いてみました。

自分に合った枕とは?

そもそも、自分の枕が合っているかはどのように判断すればいいのか、その基準を今藤さんにきいたところ、「楽に立っている時の姿勢をそのまま再現できているか」がポイントとのこと。

「仰向けで寝た時に、例えば、やや前傾気味の姿勢の人にとっては高めの枕を選ぶと、立っている時と同じ姿勢になりますよね。普段から姿勢がとても良い人の場合は、枕はあまり高くない方がいい。この考え方が基本です。ただ、姿勢が良くても肩・背中周りの筋肉量が多い人は高めの枕が必要になったり、筋肉のつき方によっても一人一人、最適な枕は違ってきます」。

また、マットレスにどれくらい身体が沈むかによっても、枕の高さは変わるそう。「硬いマットレスだと高めの枕が必要な方も、柔らかいマットレスだと低めの枕が合うことがよくあります」と今藤さん。姿勢と、筋肉の付き方、どんなマットレスを使っているか、首のカーブを見て枕の高さが決まってくるので、色んな要素を見て選ぶ必要があります。

仰向けで眠る時の理想的な姿勢は、腰などの隙間がぴたーっと埋まった状態。寝たときに、頭、背中、お尻、ふくらはぎ、かかとなど出っ張ったところがマットレスに圧迫されると、血流が悪くなったり眠りの質が落ちてしまうので、身体の重さや圧力を全身でくまなく分散できる寝具を使いましょう。

横向きの場合は、頭のてっぺん、顎、頚椎、腰椎が1本の線が通っているように真っ直ぐになった状態が作れる枕やマットレスを選ぶことがポイント。横向きの時は肩幅の分、高さが無いと肩がつぶれてしまいストレスになってしまうので、枕は仰向けよりは高めを選びましょう。スムーズに寝返りが打てるかも大切な要素です。

首の凝りや頭痛などの不調、合わない枕が原因かも!?

合わない枕を使うと、首コリ、肩コリの他、いびきが多くなります。今藤さんによると、ほとんどの症状は首の緊張から来るとのこと。首が圧迫されることで血流が滞り、筋肉が硬くなってくると首コリにもなりますし、首は太い自律神経が通っているので、圧迫により自律神経が乱れて頭痛の原因にもなってしまうそうです。自律神経が乱れると、スムーズな入眠を促してくれる副交感神経も乱れてしまうのでなかなか寝付けなかったり、夜中に頻繁に目覚めてしまったり、不眠にも繋がりやすくなります。また、枕やマットが原因で首が凝り、冷えに繋がることも。もっとひどい場合は頭痛、不眠、眩暈などの体調が悪い状態が続く自律神経失調症を起こすこともあります。

反対に、合っている枕やマットレスを使うと呼吸がしやすくなるので、脳に酸素が行きやすくなります。また、寝返りの回数が少なくなるので、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。寝返りは必要なものですが、実はちょっとした運動になるので、する度に少しずつ眠りが浅くなってしまうのです。

枕を選ぶポイントとは?

枕選びのポイントは大きく分けて3つ。サイズと素材、形状です。まず、サイズは寝返りを打ってもはみ出さない大きめがおすすめ。目安は横幅が60㎝あること。市販で売っているだいたいの枕は60cm以上あるのでそこはクリアできるはず。

次に素材に関しては、通気性が悪かったり洗えないものは衛生的にNG。そばがらや羽毛のような天然素材は洗えない上に、経年劣化が起きやすく、ぼろぼろと崩れてほこりになってしまうので取り扱いは少なくなっているとのこと。また、低反発のウレタンフォームも実は通気性が良くありません。手のひらで押すとゆっくり戻るのが特徴ですが、これは空気の通りが悪いから。頭や首の湿気が中にこもりやすく、また湿気で劣化しやすく、温度によって硬さが変化しやすいという特徴もあります。高反発のウレタンフォームで、通気口が開いていて湿気を拡散してくれるものもありますが、細かい高さ調整ができなくてぴったり合わせるのが難しかったり、洗えないので、そんなに長く使えないようです。

これらをふまえ、今藤さんがおすすめする素材は、「パイプ」。ストローのように空洞になっているので通気性が良く、自宅で洗濯も可能です。特にモチモチした感触のエラストマー樹脂のパイプは、一般的なポリエチレンのパイプのように動いても音がしないそう。パイプだと感触が気になるという方は、多層式で表面にわたが入っているタイプがおすすめです。

最後に、枕の形状は「仰向けで寝る時に後頭部があたる部分と首があたる部分、横向きで寝る時に頬を乗せる左右の部分、最低でも4箇所以上の高さが調整できるタイプがいいですね」と今藤さん。同じ横向きでも、左右の筋肉量の違いなどで、右だけ高くした方が良い場合もなどあります。このように、枕の高さをパイプなどの量で変えることができる、仕切りポケット付きのものは、細かい調整ができてベストですね。

枕は眠る時の重要な要素。どの枕が合っているかを最初から自分で判断するのは難しいので、困ったときは専門スタッフに相談を。睡眠の質をより高めるためにも、自分にぴったりの枕を探してみましょう。

今藤竜之介
「マイまくら」を運営する株式会社エイティー今藤の営業企画担当。睡眠・寝室環境・寝具寝装品の知識をもとにアドバイスできる「人材睡眠環境・寝具指導士」の資格を持つ。イオンモール沖縄ライカム店や、沖縄パルコシティ店で日々お客さんに寝具についてきめ細やかなアドバイスをする。

眠りの専門店マイまくら公式サイト:https://mymakura.com

睡眠専門医 普天間先生に聞く!眠ることの大切さ

ここ数年、睡眠に関する注目度が上がってきています。雑誌やテレビ、ラジオなど、さまざまなメディアで睡眠について特集されるほか、寝具をはじめ、睡眠の質を高める栄養素が配合されたお菓子など、睡眠に関する商品も数多く発売されています。今、注目を集めている睡眠について、睡眠の専門医である普天間国博先生にお話をうかがいました。

普天間国博先生
琉球大学病院 精神科神経科 睡眠外来担当医師。東京医科大学で8年ほど睡眠診療に携わった後、沖縄へ戻り、医療法人社団輔仁会 嬉野が丘サマリヤ人病院で睡眠診療科長を務める。2021年より琉球大学病院にて勤務。

睡眠は健康を保つ三大要素の一つ

健康な毎日を過ごすために、食事や運動と並んで重要とされている「睡眠」。この3つがバランス良く行われていると、病気の予防や健康の増進に結びつきます。厚生労働省健康局が作成した「健康づくりのための睡眠指針2014」には「睡眠12箇条」が定められており、「良い睡眠は生活習慣病予防につながります」「若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ」「勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を」など、睡眠に関する注意やアドバイスが盛り込まれています。睡眠不足が続くとどうなるのか、普天間先生にうかがいました。

「睡眠不足が続くと、単純に次の日は眠いですよね。それが続くと、だるさを感じたり集中力が落ちたりして、仕事や勉強でミスが増えてきます。そして体調不良につながってしまう。睡眠にはさまざまな機能があるんですが、もっとも基本的なものは身体とこころのメンテナンスです。睡眠が十分に取れないと、身体は疲れたまま、気分もリフレッシュできません。それによって免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、気分的に落ち込みやすくなったり、ひどくなると深刻な病気につながることもあります」。

睡眠には、身体とこころの休息やメンテナンスをするほか、記憶を整理して定着させたり、ホルモンバランスを整えたりする機能もあります。しかもどれも重要かつ、睡眠をとることでしかできないこと。こうした睡眠による重要な役割を知ると、睡眠不足を軽く考えることはできません。

kenko ISLAND62号より

寝不足はたまるけれど、寝だめはできない睡眠

「人間が生きていくうえで非常に重要な睡眠ですが、『負債』はたまるけれど『寝溜め』ができないのも特徴の一つです。寝不足が続くと『睡眠負債』と呼ばれる寝不足の借金がたまります。寝不足の借金はたまればたまるほど、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まります。例えば高血圧や糖尿病は、血糖値や血圧のバランスが崩れることで引き起こされますが、睡眠不足や睡眠障害は血圧上昇や血糖値上層のリスクとあります。また、睡眠不足で脂肪がつきやすくなることで太りやすくもなります。さらに慢性的な睡眠不足はこころの病気にもなりやすく、不眠症からうつ病に進展するケースも多く見られます。最近では、認知症のリスクが高まるという研究結果も出ています」。

また、中高生や若年層の夜更かしは睡眠のリズムを悪化させたり、睡眠不足による体重増加にもつながるとのこと。思春期の睡眠に関する研究では、就寝や起床時間が遅いことは学業成績の低さにも関係するとの結果があります。

眠りたいのに眠れない時の対処法

睡眠の重要性を理解して、規則正しい生活や十分な睡眠時間を確保しようと意識しても、眠れない場合はどうすれば良いのでしょうか。

「眠れない時は、無理に眠ろうとすると余計に眠れなくなるので、自然と眠くなる時間を待った方が良いです。ただ、就寝時刻が遅くなったからと言って起きる時間は変えないことが重要です。私が睡眠外来で不眠症の患者さんに行う治療はいくつかありますが、その一つに『認知行動療法』というものがあります。眠るための部屋の環境を整えたり、気分的にリラックスできる方法を考えるやり方です。不眠症では、脳が常に過剰に興奮して夜間もなかなかリラックスできない状態となります。心配事やストレスが原因となることが多く、中高年の女性に多く見られますが、すぐに睡眠薬に頼るのではなく、睡眠環境を整えることから始めるといいですね」。

世界には、過去に「人がどれくらい眠らずに起きていられるのか」という断眠に挑戦した記録がありますが、それによると断眠を開始して数日すると幻覚や妄想が出始め、最終的には記憶や言語障害などの心身に変調を来すようになったとのこと。

睡眠不足でいいことは一つもなく、ぐっすり眠ればいいこと尽くし。毎日の睡眠を大切にしましょう。

[INFORMATION]
琉球大学病院 精神科神経科 睡眠専門外来
毎週金曜日午前中(予約制) TEL:098-895-3331
http://www.hosp.u-ryukyu.ac.jp/index.html

公式マスコット「わお」って?