身体を整える「食養生」前編 〜まずは基礎を知ろう!〜

その人の体調や体質にあった食生活をすることで健康を保つ食養生(しょくようじょう)について、食養生コーディネーターの住吉実那さんに聞きました。前編は、食養生を実践するために知っておきたい基礎について、後編は食養生の実践方法を解説します。

食養生って何?

「食養生」とは、健康維持のために何をどのように食するのがいいのかという多くの先人たちから受け継がれている英知のこと。日本最古の医学書「医心方」にはさまざまな医説や食養法が多数紹介されています。食養生が他の食事療法や健康法と違う点は、健康を維持するために大切なのが食べ物だけではないという点だと住吉さんは話します。

日頃の生活習慣も重要で、せっかく食事に気を付けても、ストレスや過労、不眠などで健康が損なわれることもあります。食養生の根本には食べ物を含め5つの大切な要素があると住吉さんは言います。「食養生を構成するのは『心、太陽、空気、水、食物』で、この並びの順に健康への影響力が強いとされています。まずは『心』が重要。例え食べ物に気を使っていても、イライラしているときは健康とはいえないので、まずはストレスを解消して『心』を整えることから意識するといいですね」。

健康の指標となる「気血津液(きけつしんえき)」

食養生のベースの考え方である漢方では、健康かどうかの指標となるのが「気血津液(きけつしんえき)」といわれています。これは人の体を構成する基本的な物質を表していますが、それぞれの役割は以下のようになります。

「気」
目に見えない活力や、人間が持つ器官や組織の代謝のことです。不足したり乱れたりすると、体力や抵抗力が落ちて、疲労や頭痛などの不調が起こります。

「血」
細胞に酸素や栄養分を届ける役割を持つ血液を指します。乱れると、貧血や冷え、生理痛などの不調が起こります。

「津液」
人間の身体に巡っている血液以外のすべての水、つまり汗やリンパ液などの体液を指します。流れが滞るとむくみに繋がり、肌のハリや髪のツヤが失われてしまいます。

また、気血津液の働きは連動していて共に影響し合います。「血」と「津液」は栄養を巡らせてくれ、身体を潤してくれる大切な要素。単体では動けませんが、「気」が動力となり、体内を巡るといわれています。この気血津液のバランスが取れた状態を維持できている状態が「健康」といえます。こうした健康の要となる「気血津液」のバランスをとるための方法が食養生です。

食養生で病気になる前に軌道修正

食養生の基本的な考え方のひとつに、病気になったものを治すのではなく、病気をしない身体をつくるというものがあります。なんとなく不調を感じる「未病」の状態はのちに生活習慣病などに繋がるといわれているので、早めに気づいて対処することが必要です。後編では、実際の食養生の方法を解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。

後編の記事はコチラ:https://www.islandweb.okinawa/syokuyouzyou2/

住吉実那さん
R.KANASA 株式会社代表。食育アドバイザー、日本食事療法士協会・食養生コーディネーターの資格を持つ。自身と息子が重度のアレルギー体質を持ち、病院の治療だけでは治らなかったことを体験し、食の改善と体質改善を始める。食養生に関する講座の開催や、日常生活に取り入れやすい食養生の情報をSNSで発信している。
〈Instagram〉biyoshoku_mina

“体力”と上手く向き合うコツ

kenko ISLAND63号「体力 免疫 強い身体」では、「体力ってそもそも何?」という話をはじめ、体力アップのためのワークアウトや体力と免疫力をサポートするレシピを掲載しています。ここでは誌面には載せきれなかった荒川先生の考える体力維持・体力づくりについて紹介します。

荒川雅志先生

国立大学法人琉球大学 国際地域創造学部/観光科学研究科 教授。医学博士。1999年に沖縄に移住し、2012年に最年少で観光産業科学部教授になる。主に長寿者のライフスタイル、沖縄健康長寿素材の研究を行う。全米でベストセラーとなったビジネス書「ブルーゾーン・世界100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール」の翻訳と監修を担当し、11月から発売中。
http://health-tourism.skr.u-ryukyu.ac.jp/

意外と知らない体力の基礎知識

まずは、誌面でも紹介した体力の基礎知識について教えてもらいました。

「体力は大きく分けて2つあります。運動をするための体力は『行動体力』といい、主に筋力、瞬発力、持久性など身体的な要素のことをいいます。これが、一般的な体力のイメージですね。一方で、健康に生活するための体力は『防衛体力』といい、感染症などの病気に対する免疫のことを指すほか、意欲や集中力、ストレスへの抵抗力などの要素が含まれています」。

体力がつくことで、身体や心に具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

「体力がつくと、身体的には持久力がついて疲れにくくなったり、免疫力が上がって風邪をひきにくくなります。また、前述の通り意欲や集中力も上がるので、行動パフォーマンスがアップし、自信を持てるようになる人が多いです。自信がつくことで、日常生活が活発的になり、考え方もポジティブにあるので、QOL(Quality of Life/生活の質)があがります」。

運動と意気込むのではなく「生活体力」のアップを目指して

私達が日常生活を送るなかで大切な体力ですが、20代から少しずつ、加齢とともに落ちていってしまいます。残念ながら自然に回復することはありませんが、日々の過ごし方で体力を維持もしくはアップすることができます。

「私は体力の維持やアップには、“生活体力”を上げることが大切だと考えています。これは長寿者の研究をしている時に気づいたのですが、健康長寿の方って、不便な環境で生活していることが多いんです。例えば、階段の上り降りが多かったり、買い物をするために歩いてスーパーに行く、洗濯は乾燥機じゃなくて自分で干すなど、無意識に身体を動かしている。もちろん、それぞれにあったライフスタイルがありますが、『運動しなくちゃ』と意気込みすぎずに、日常のなかで身体を動かす機会を増やすべきだと思います。運動は習慣化させることが、とても大切ですから」。

さらに荒川先生によると、防衛体力は、生活する環境が大きく関わってくるといいます。

「ストレスフルな環境にいると、ネガティブな考え方が増えて、疲れが溜まってしまいます。逆に、笑顔が多い環境だと気持ちも考え方もポジティブになれます。なので、仕事や趣味、人付き合いなど、生活スタイルが変われば、体力の変化にも影響するのです。運動もそうですが、楽しい、幸せと感じることが増えれば、体力アップにもつながります。今の生活によって、あなたの体力が作られているので、定期的に見直しを心がけて、積極的に新しいことにもチャレンジしてみてください」。

公式マスコット「わお」って?